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「正しい会社のやめ方について」高裁及び最高裁判例

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会社員が起業して新たに事業を起こす際、今勤めている会社を辞めなければいけないことになります。
その会社からしてみれば、有力な戦力の喪失を意味することになりますから、いい顔はしませんよね。起こそうとしている新規事業がその会社と同業種である場合、新たなライバルが出現することになるのでますますいい顔をしません。それだけでなく、退職時にその会社から人材を引き抜いたり、取引先をもっていくような行為にまで及んだ場合はどうでしょうか。揉め事になるのは目に見えてます。

憲法上、国民には職業選択の自由があり、会社にその人の退職を止める権利はありません。しかし、「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様」で会社を辞めて起業した場合、損害賠償の対象となるという裁判例があります。

「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様」とは、要するに、悪質な辞め方はダメということなのですが、何を基準に悪質と評価するかがもんだいですね。
上の正しい会社の辞め方判例は、同じ79ページ目に、ご丁寧にナンバリングまでして(1)〜(7)を考慮要素を判示してくれてます。
この判例の7つの要素を、皆様にわかりやすいようにまとめると以下のとおりです。
(1) 退職従業員の地位、影響力等
(2) 在職中の開業準備の有無、程度
(3) 在職時の取引先に対する働き掛けの有無、程度
(4) 新会社が持ち出した事業の内容(人材、ノウハウ、顧客情報等)
(5) 新会社の売上高にしめる元会社から持ち出した受注額の割合
(6) 元会社の受ける損害額の売上高に対する割合
(7) 誠実な対応の有無(退職の正当性、退職時期の予告の有無、秘密性、妥協の有無等)
・・・となります。例えば
(1)については、退職時の地位が…
営業部長 悪質度⇧
役員 悪質度⇧⇧
平社員 悪質度⇩
(2)については、在職時に…
事業資金、土地確保済み 悪質度⇧
後は退職するだけ^^ 悪質度⇧⇧
起業の相談や計画策定のみ 悪質度⇩
(3)については、在職中の取引先に対して新会社の話をする場合
会社概要の紹介をする。 悪質度⇧
受注を取り付けておく。 悪質度⇧⇧
設立する予定がある旨だけ伝える。悪質度⇩
(4)については、元会社から…
顧客情報、営業秘密ごっそり頂きます 悪質度⇧
人材ごっそり頂きます^^ 悪質度⇧⇧
営業秘密に至らないノウハウを利用 悪質度⇩
(5)については、取引先にも相手を選ぶ権利はありますので、新会社と取引を始めても直ちに悪質とまでいえません。したがって…
ほぼ持ち出しで 悪質度⇧
そうでなければ 悪質度⇩
(6)については、退職により元会社が…
売上高1/5ダウン 悪質度⇧
倒産 悪質度⇧⇧
売上高1/10ダウン 悪質度⇩
(7)については、要するにフェアプレーかどうかです。判例は、ここを特に重視している気がします。
①退職時期を明らかにする。不意打ちはダメ。
②退職後に競業する事業をする旨を会社に伝える。秘密にしない。
③誓約書の求めを完全に拒否しない。応じるべき内容については応じる。
④最後まで話し合いによる解決を諦めない。話し合いの結果がダメだとしても、最後までこちらが誠意を尽くしたという過程を証拠として残す意味はある。
⑤限定的な競業禁止、ロイヤリティー支払い等、元会社に配慮した規定を置くと悪質度がかなり落ちます。

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